第2弾 三木俊一郎氏 石井克人氏

vol.4 緊張感を演出する


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おおすみ 僕は、三木さんが学生時代に作ったクレイアニメ(注:1)のファンなんですよ。ずいぶん前だけど知り合いにみせてもらってずっと記憶に残ってる。本当にすごかった。

三木 お~、ありがとうございます。

おおすみ またクレイアニメを作ったりしないんですか?

Nice_210 三木 うーん、新しい作品をつくる気はないですね。どちらかというと、今の自分の置かれた立場と、新しく知り合ったスタッフと一緒に、もう一度あの世界観を再現したらどうなるんだろう、という興味はありますね。

おおすみ コマ撮りそのものが、面倒くさいってことはないの?

三木 それもちょっとありますね。だからもう手法はコマ撮りじゃなくして、あらゆる特殊効果を使って、あれに近いことを今やったら、どれくらいクオリティーが上がってるのか、とういうことに関しては興味があります。

‐‐‐‐三木さんも石井さんも、映画やCMなどを作るとき、細かいキャラクターまでイチから全部決めてたりしますよね。やっぱり最初から最後まで本当は全部自分でやりたいと思っていたりするのでしょうか?

石井 自分でやりたいのも山々なんですが、自分よりうまい人たちがいるってのも知ってるので、ある程度までは書いて、まぁ靴なんて作るわけないんだけど一応描いて、それを見た感じでやってくれと投げるんです。それで、イメージ通りにならなくても、それはそれで事情があるんだなと。

おおすみ うん。

石井 CMをたくさんやってると、やっぱり衣装はこうじゃなきゃダメだとかいって、たくさん作ってもらうんですけど、タレントさん本人が着たくないだとか、似合わないとか、いろいろな事情がでてくるんですよね。美術とかの場合は、自分のイメージより、さらにもっとすごいのをデザイナーさんが作ってきたりしてくれますね。あー、こういう人がいるなら任せてもいいかな、と思うんですよね。

おおすみ 協力ってのはありがたいものでね、自分にないところを補ってくれるからね。でもこれからは一人で何もかもできる人、あるいはやりたいと思ってる人が、台頭してくるのかもしれないなぁ。

石井 一人のパワーが強いと、すごいんだなってのはなんとなくわかります。小池健君とかみてると思います。マッドハウス(注:2)のアニメーターで『TRAVA - FIST PLANET』(注:3)を僕と一緒に演出した人なんですけど。

おおすみ あ、彼はマッドハウスから出てきたとは信じられないくらい、自分のスタイルで絵を描いてたからビックリしたね。前に一度、アメコミ漫画をアニメーションで作りたいと思った時があったんだけど、アニメ業界でああいう絵を描ける人は絶対いないなと、そのころは結論付けちゃったんだよね。アニメーターってのは、例えば宮崎駿とそっくりな絵を描けるから、ジブリで優秀なアニメーターとなるわけだからね。いかに自分のことを殺せるかってことでしょ。それは仕事として当然なんだけど、そのうち何年かするとその絵しか描けなくなっちゃうんですよ。

石井 今また小池君と『RED LINE』(注:4)という劇場公開用アニメーション作ってて、僕の中では、完全にアメリカ向けに作ってるんですよ。しかも西でも東でもなく、アメリカの真ん中辺に住む人たちにポイントで狙ってるんです(笑)。

おおすみ (笑)わかる、わかる。

Nice_271 石井 ほんとにバタ臭い映画で、車もいっぱい出てくるみたいな。世界観はスターウォーズなんです。スターウォーズの中のレースをやってる人たちの話(笑)。

おおすみ いいねぇ、それはぜひやってよ!

石井 僕、何年か前にタランティーノの『KILL BILL』のアニメパートのキャラクターデザインをやったんですけど、自分の中でまだまだだと思ったんですよね、もうちょっとイケる!みたいな。

‐‐‐‐アメリカでの評判はどうだったんですか?

石井 よかったんですよ。タランティーノも大喜びでした。彼は『鮫肌男と桃尻女』のオープニングを見て、「あれは誰が描いたんだ?」となって、僕が描いたって言ったら「じゃ、今度頼むから」ってことになって、3年ぐらいして新宿の小さい飲み屋に呼ばれて『KILL BILL』ってのをやるんだけどどうか?て言われたんです。

(ここで石井克人新作アニメーション、『RED LINE』のパイロットフィルム(5分ぐらいでした)をみせてくださることに!そして大満足の鑑賞会の後も対談はつづく・・・)

おおすみ これは、最終的にどれくらいになるの?

石井 1時間半ちょうどくらいです。

おおすみ この作品で難しい点は、このあとストーリーをどこまでひっぱるかだね。ストーリーはどうでもよくって、遊びさえあればいいんだとういう作品もあるけど、これは、よほどストーリーへの吸引力っていのかな、そういうものがないと、絵柄がおしゃれっぽいからミュージッククリップに見えちゃうんですよね。それは損です。本当に。単なる素材集になっちゃう。1カット、1カットが、すべて一つの方向に向かってるような、何かに引っ張っていかれる緊張感みたいなものが持続すれば、これは大成功するね。

石井 なるほど。

おおすみ 石井さんのアニメ『TRAVA - FIST PLANET』でも、宇宙船の中でキャラクターたちが馴れ合ってる。僕もルパンや次元でやったけど、ああいうの大好きなんですよ。馴れ合いながらも、緊張感をだしていくんですよね。

石井 ですね。

Nice_197_1 おおすみ 例えばタランティーノの『パルプ・フィクション』なんかでも、サミュエル・L・ジャクソンが車の中で「ビッグマックがフランスでは…ナントカ、カントカ」ってダラダラとくだらないおしゃべりを熱中してやってるでしょ。やってるけど、観ててね、これからギャングに行くんだっていう緊張感は絶対はずさないんですよ。

三木 はいはい。

おおすみ 今見たかぎりでは、あの仮付けの音楽が場面を伴奏しすぎてたからね、このままじゃミュージッククリップになっちゃうなと思った。違う音楽が流れていたら、緊張感に繋がったかもしれないね。ルパンでも音楽監督の山下毅雄さんと打ち合わせした時も、最初にそれ言ったんだけど、あの人は伴奏音楽に慣れててね(笑)、全部で90曲ぐらいつくるのだけど、とにかくドンスカドンスカは全部やめてくれっていったんですよ。絵にあわせた伴奏はいらないって。

三木 へぇ~。

おおすみ いま目の前で起こっていることを、わざわざ伴奏する必要はないと。もし入れるなら、今そこで起こってないこと、しかしこれから起こるであろうこと、あるいは、もう過去に失ったであろうこと、そういう距離の遠いものを流してくれと言ったんです。

三木 それ面白いですね~。

おおすみ で、場面の迫力がなくならないように、SEだけはガンガン入れて…。たとえば、デビッド・リンチのマッチをちょっと擦るだけで…

三木 ジョワ~って。

おおすみ そうそう、音が広がる。それぐらいのSEの誇張ってのはずっと言い続けた。

三木 あー、おもしろい。

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おおすみ それは僕の独創でも何でもなくって、昔のアメリカのハードボイルドタッチの映画は、ハリウッド風のアクション伴奏が、ほとんど入ってないんですよ。ニューヨークの冷え切った夜、遥か向こうのビルの方にトランペットの音が流れている、でもこっち側では血みどろの戦いをしている。そういう場面が非常に子どもの心にも印象に残っているから、そういう使い方をするように心がけた。

三木石井 へぇ。

三木 非常に勉強になりますね。僕らみたいな今30代、40代で演出をしてる人間にとってもいろいろ発見があっておもしろいなぁ。

‐‐‐‐まだまだ話しはつきない3人の対談ですが、ここからはより一層ディープに。続きは番外編『おおすみ正秋の物語論』にて近日公開します!

:1  三木さんのクレイアニメ・・・学生時代から部屋で一人でクレイアニメを制作し、世界中で数多くの賞を受賞している。

:2  マッドハウス(wikipedia)

:3  TRAVA - FIST PLANET(英語版 wikipedia)

:4  RED LINE・・・石井監督の次回長編アニメーション作品。

三木俊一郎監督

1968年生まれ。東京都出身
武蔵野美術大学卒業。葵プロモーション入社後、CMディレクターとして数々の国際的な賞を受賞。特にファンタのCMなどで見せるナンセンスなギャグ表現に定評がある

石井克人監督

1966年生まれ。新潟県出身
武蔵野美術大学卒業。東北新社に入社後、CMディレクターとして働く傍ら、多数の映像作品を手がける
クエンティン・タランティーノのファンとして知られ、『キル・ビル Vol.1』ではアニメパートを担当した
主な監督作品:鮫肌男と桃尻女、PARTY7、茶の味、ナイスの森、HAL&BONS

ナイスレインボー

三木俊一郎監督、石井克人監督、ANIKI(伊志嶺一さん)によりクリエイターユニット“ナイスの森”を2003年に設立。同名の劇場映画を制作。 2006年10月に株式会社ナイスレインボーとして現在活動を続けている

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vol.3 ファーストシリーズの魅力


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‐‐‐‐ルパン三世ファーストシリーズでは何話目がお好きですか?

石井 ぼくは、1、2話が好きですね。特に2話が好きです。あのパイカルの。

三木 あー、『魔術師と呼ばれた男』ね。

石井 あれはもう、何回も観ましたね。アニメ本も持ってますもん。アニメを漫画にしたやつ。質感がすごく好きだったんですよね。

おおすみ へぇ。

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石井 なんか当時、好きだった質感ってのがあって、一番最初に漫画に目覚めたのが、『アストロ球団』(注:1)という漫画で、作画の中島徳博さんがお尻やシワを描くのがすごくうまいかったんです。で、そういうシワとか描けるのすごいなぁから始まって、ルパンを観たとき、「ヤバイ!」っていうか、「キタッ!」って感じがしたんです。

‐‐‐‐石井さんの中で、ルパンは"ストーリー"というより"絵"なんでしょうか?

石井 いや、ストーリーも好きですよ。やっぱり前半の方の大人っぽい話とか、すごい好きですね。男女の馴れ初めがアニメの中に絡まってるのって、あの時代そんなになかったですからね~。

三木 そうそう。

‐‐‐‐おおすみさんは最初にルパンを作る際、子どもが見ることを想定していなかったそうですが、放送が始まってからもですか?

おおすみ もうね、したらダメだと思ったの。僕は、さんざん文句言われてクビになったけど、クビになった理由は唯一点「視聴率が低い」ということだったんです。その理由としては、説明不足ということだったんだけど、「子ども向きじゃない」ってのは、理由として一回も出てこなかった。それが残念だったね。むしろ「子どもの教育によくないからクビだ!」ってはっきり言ってくれたほうがよかったよ。

三木 でも僕らはまさに子ども時代に惹かれましたねぇ。大人っぽいところがよかったんでしょうね。

石井 あと、車とか時計とか、昔から好きなのかもしれない。僕『がんばれ!ベアーズ』とか好きだったんですよ。

おおすみ 僕も物心ついたばかりの時に『愛染かつら』(注:2)っていうメロドラマみて、えらい感動した覚えがあるんだけど、大人向けの作品なのに何故だろうって考えたら、3歳くらいの子どもでも、人を「好きなる」「嫌いになる」「別れると悲しい」っていう人間の基本感情が、ちゃんと分かるんだよね。メロドラマって、大体この3つの要素で成り立ってるんですよ。

石井 ルパンでも三角関係とかあって、不二子はパイカルのことを別に嫌いじゃなかったり、でもルパンも好きだったり、そういう複雑な大人の事情とかがあって、さらに謎解きとかあったじゃないですか、あれがすごかった!1本の映画でもいいんじゃないかと思ったぐらい。

おおすみ モンキーさんとの対談でも話が出たんだけど、当初、1時間半の映画を毎回30分に縮めるくらいの密度でやろうと思って、実際、1時間半の台本を書いてもらって削ったり直したりして作ってたの。

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三木石井 へぇ!

おおすみ 作業としては大変だったけどね(笑)。

三木 最初、2話はどんな感じで膨らんでたんですか?

おおすみ 2話はねぇ、膨らませたというより、最初から削る一方だったの。シリーズとして、五右衛門出せ、銭形出せ、レギュラーは毎週欠かさずに!っていうプレッシャーがあったから、2話の場合それを想定して台本が上がったんだけど、五右衛門なんて出せるもんじゃないから切っちゃおうとか、たしか銭形も出てないんじゃなかったかな?

石井 出てないですね。

三木 それがいいんですよね~。

おおすみ うん。そういう減らしかたをして、最終的に「あ、まとまった。」ってなったの。

三木 なるほど。じゃぁ、最初の台本には銭形も出てたんですね。

おおすみ あと、2話で一度やってみたいなと思ってたのは、"見終わった後も、後をひく作品"を作ってみたかった。ディズニーや東映なんかのアニメーションで、終わってから後をひくものがないんですよ。観てる時は感動したり、興奮したりして、それはすばらしいものがいっぱいあるんだけど。ほら、よく作品の良し悪しじゃなく、見終わった後に「あの人たちはどうなったんだろう?」とか「どうしてるんだろう?」とかいう風に、キャラクターが後をひく映画ってあるじゃないですか?

石井 ありますね。

おおすみ ディズニーの作品は好きなんですけど、何本見てもそういう作品はないんですよね。アニメってのはなぜかな?見終わったらそこで、本当に終わりになってしまうんですよね。だから、2話では後を引くものを作りたくて、ラストの作り方は何パターンかあったんだけど、結局あのかたちにしたんです。狙ったほど余韻は残らなかったけどね(笑)。まぁちょっとは後ひく感じになったかなと。

三木石井 ひきますよ~!

三木 なんか、儚さがあるんですよね。

Nice_175 おおすみ でも、テレビ局のリアクションは非常に厳しいものがあったね。「これで終わりですか?」とか、そういうドキッとする質問されたりね。

石井 わかんなかったんですね。良さが。だって探偵物語とかって、まんま旧ルパンですもんね。完全に影響されまくってますよね。旧ルパンがなければ探偵物語も生まれてないですよ。

おおすみ あはは。いい意味で後を引いたんなら、やってよかったのかな。

:1  アストロ球団(wikipedia)

:2  愛染かつら(YouTube)

三木俊一郎監督

1968年生まれ。東京都出身
武蔵野美術大学卒業。葵プロモーション入社後、CMディレクターとして数々の国際的な賞を受賞。特にファンタのCMなどで見せるナンセンスなギャグ表現に定評がある


石井克人監督

1966年生まれ。新潟県出身
武蔵野美術大学卒業。東北新社に入社後、CMディレクターとして働く傍ら、多数の映像作品を手がける
クエンティン・タランティーノのファンとして知られ、『キル・ビル Vol.1』ではアニメパートを担当した
主な監督作品:鮫肌男と桃尻女、PARTY7、茶の味、ナイスの森、HAL&BONS


ナイスレインボー

三木俊一郎監督、石井克人監督、ANIKI(伊志嶺一さん)によりクリエイターユニット“ナイスの森”を2003年に設立。同名の劇場映画を制作。 2006年10月に株式会社ナイスレインボーとして現在活動を続けている

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次回更新は6/24の予定です

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vol.2 漫画の味をアニメで活かす


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‐‐‐‐石井さんにとって、ルパン三世ファーストシリーズの魅力って何ですか?

石井 そうですねー、やっぱ質感ですかね。

三木 シズル(注:1)ですか?(笑)

石井 シズルですね~(笑)。手の形とか。袖ぐりの丸い感じとかね。

三木 あー、手の形は好きだよね。

石井 HAL & BONS(注:2)でもいかされてます。っていうか、そのままパクってます。(笑)

三木 CGの犬のキャラクターが主人公の話なんですけど、手の形がルパンの手を真似てるんです。

おおすみ そうか~、なんか手だけ、顔と違和感があると思ったら、そういうことかぁ(笑)。

石井 大塚康生さんの指示書を参考に…。

おおすみ ルパンっていうか、次元でよくその手を描いた気がするなぁ。むしろルパンはもうちょっとスマートな手でいいんじゃないかっていう意見持ってたんだよね。
次元はゴツゴツしたブローニング(注:3)を握った時の、あの節のある手ね。

石井 いいですよねぇ!ホント、まんま僕パクってますからね(笑)

三木 (HAL & BONSのパンフレットを指しながら)これ大塚さんの指示書じゃーん、HAL & BONSのじゃないじゃーんってね。(笑)Nice_302

石井 大塚さんの指示書を、犬の質感にしてCG部に渡したの!(笑)

おおすみ これひょっとしたら、アニメの設計図からとったんじゃない?

石井 そうです、そうです。

おおすみ え?設計図なんて手に入ったの?

石井 ありますよ。本とかも出てますし、昔のルパン特集のコーナーとかでもあります。

おおすみ ルパンをはじめるまえに大塚さんと、ルパンの手は特別だから手のモンキータッチは再現しようって、かなり意図的にやった記憶があるんだ。だから石井さんはすごいよ!ルパンの中でも手に注目するなんてね(笑)。

‐‐‐‐おおすみさんは、どうしてそんなに手にこだわって作ったんですか?

おおすみ 当時の漫画にはなかったから。あのタッチが。いかにも職人というか、プロフェッショナルってイメージの手なんですよ。握られるのが拳銃なのか、何なのかは別として。何かを扱いなれしている人間の手なんですよ。

石井 大概、漫画って手がちっちゃくなっちゃう。

おおすみ そう。それで、丸っこく描くもんなんですよ漫画の手って。今でも僕は原則はそうだと思うんだけどね。モンキーさんの絵ですごいなと思うのは、絵全体が与える印象としては、丸みがある。漫画らしい。ご本人もリアルだということは評価されてもいいが、劇画といわれるのはちょっと、という考え方があってね。やっぱり漫画派だからね。でも漫画派の中でも、一番劇画的なリアルな表現、リアルなコンテンツに対応できる絵をもってて、だからテレビで本物の拳銃や車をだそうとかいうのに、「お、それでいける」ってピタッときたんだよね。

Nice_144三木 へぇ。

おおすみ 普通それやろうと思ったら、描き込んだ劇画調じゃなきゃ合わなかったんだよね。モンキーさんは、ずっと漫画の味を捨てないで持ってながら、リアルなんだよね。

石井 なるほど。

おおすみ 今、大学で研究しているキャラクター開発で、漫画のスタイルと、取り扱う物語のコンテンツとが、どのくらいの許容度がもてるか研究をしようと思ってるの。アニメ会社からのバックアップもあってね。

三木 へぇ、それはどんなプロジェクトなんですか?

おおすみ ようするにキャラクター・イノベーションというかな。キャラクターのスタイルを大きく7種類に分類するんですよ。もちろん本当はもっと多く分類できるんだけれども、7種類位がちょうどいい。たとえば端にサンリオのキティちゃんとか、ブルーナのミッフィとかがいて、もう一方の端には さいとうたかを先生とか影まで書き込んであるようなスタイルがある。で、その間のちょうど真ん中辺りに、先ほどお話した漫画派、手塚さんやら石ノ森章太郎やら、ほとんどのメジャーな漫画家が入るわけです。その間を埋めていって横の様式ををつくり、さらに今度は縦にそれぞれアイテムやセットを足していく。最終的にはマトリックスにしてコンテンツとの関連を探る。最後のミソは、キャラクターは「顔(表情)」ってことになるんだけど、漫画家の描く表情の在庫には限界があって、ある一定量生産しちゃうと、それ以上描け描け言っても結局同じ顔で髪型を変えただけってことになっちゃう。これはデータでもはっきりしている。そこで漫画家個人のアーカイブをつくっちゃおうと。

三木 へぇ、なるほど。

おおすみ このプロジェクトは、企画開発という側面があって、漫画家本人ではなく漫画家と一緒になって作品を作っていく、プロデューサーのためのシステムなんです。

三木 壮大なプロジェクトですねぇ!

おおすみ 実際問題、こういうことがあってね…。アニメ界では常識なんだけど、ちょっと出てくる通行人とか、お巡りさんとかはアニメの作画家が描くんだけど、僕はそれが嫌いでね。大塚さんに描いてもらったりしてたんだけど、大塚さんの絵は癖があって、モンキーさんの絵を離れて自由に描くと、まるで違う絵になっちゃう。街の通行人ひとりといえども、モンキーさんの絵じゃなきゃ嫌で、モンキーさんに頼んだんだけど、あの人も無精者でね(笑)、「それはありがたいけどね、ちょっとねー」なんて言われちゃって。その時にすでに今の研究と同じことやってたんだけど、「モンキーさん、悪いけど、あなたの原作の中から好きな顔使わせてよ」って、それで服装と髪型だけ変えて、最終的に「モンキーさん、これどう?」って見せたら「あ、いいねぇ!」って(笑)。全部それで終わっちゃう。結局、書き下ろしせずに済むから、ある意味、漫画家を解放するシステムにもなるな、と。だから、今でも本気で調べる気になったら、このアニメにちょこっと出てきた、このキャラクターは原作のどこにいるか、とかって探すこともできるんだよね(笑)。

三木石井 へぇー!

:1    シズル・・・臨場感のあるニュアンス を表現する語として用いられる映像業界用語。

:2    HAL & BONS(Grasshoppa!)

:3    ブローニング・・・弾倉が蓮根型で回転する拳銃。プロはオートマティック型よりも確実性の点でこちらを使う。

三木俊一郎監督

1968年生まれ。東京都出身
武蔵野美術大学卒業。葵プロモーション入社後、CMディレクターとして数々の国際的な賞を受賞。特にファンタのCMなどで見せるナンセンスなギャグ表現に定評がある


石井克人監督

1966年生まれ。新潟県出身
武蔵野美術大学卒業。東北新社に入社後、CMディレクターとして働く傍ら、多数の映像作品を手がける
クエンティン・タランティーノのファンとして知られ、『キル・ビル Vol.1』ではアニメパートを担当した
主な監督作品:鮫肌男と桃尻女、PARTY7、茶の味、ナイスの森、HAL&BONS


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三木俊一郎監督、石井克人監督、ANIKI(伊志嶺一さん)によりクリエイターユニット“ナイスの森”を2003年に設立。同名の劇場映画を制作。 2006年10月に株式会社ナイスレインボーとして現在活動を続けている

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vol.1 ルパンは性の目覚め


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‐‐‐‐第一回目の対談が、モンキー・パンチさんだったことを受けて、

三木 モンキーさんとは、どのくらいのお付き合いなんですか?

おおすみ ルパンの放送が始まる2年ほど前からだから、40年近くなるかなぁ。

石井 初対面の印象はどうだったんですか?

おおすみ 漫画アクションができた時、最初からルパンは注目されてたんだけど、名前も「モンキー・パンチ」とかだから、誰も日本人が描いてると思ってなかったんだよね。会うまでは漫画のスマートな印象から当時でいう岡田真澄のようなかっこいい男なんだろうな、と思ってたんだよ。

三木 あー、イケメンの洒落た男みたいな。

おおすみ ところが、会ってみたら北海道のじゃがいもみたいな、いい意味で本当に素朴な男だった(笑)

三木 ちょっと、いい話ですねぇ。

おおすみ しばらくみんなも、本当にルパンを描いた本人かなぁと思ってたね(笑)
それでちょっと絵を描いてもらうことにしたの。今でこそウソみたいな話だけど、当時、女の裸が漫画に現れることはまずなかったんですよ。モンキー・パンチもチラッとは感じさせてたけど実際にはまだ描いてなかったからね。僕はテレビのルパンでどうしてもそれをやりたかった。で、その場で描いてみてって言ったら、「わかりました」って描き始めたんだけど、デッサンみたいにアタリ線ばっかり描いててね。結局、帰るまで描けなかったの。だから、みんな「ほんとに本物のモンキー・パンチだったのかな?」って疑問を持ったままで終わっちゃった(笑)。

石井 (笑)へー!緊張してたのかな。

‐‐‐‐お二人は、モンキーパンチさんとお会いしたことあるんですか?

三木 お会いしたことないですね。だから、僕にも都会的なイメージしかないですよ。葉巻とかくわえてそうな…(笑)。

‐‐‐‐三木さんは、ルパンが出てくるCMの演出をなさってるんですよね?確か、おおすみさんがルパンの声優に山田康雄氏を選んで最初に演出し、三木さんが山田氏声優時代の最後のルパン演出をしたという不思議なつながりがあるんですよね。

三木 僕がやったのは石油会社EssoのCMで実写とアニメのルパンを合成させたやつですね。

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おおすみ あ、じゃぁ大塚康生さんとやったの?

三木 やりました。

おおすみ EssoのCMについては、大塚さんと電話でかなり長く話した覚えがあるなぁ。たしかその時に、演出いいねって話したんだよ。大塚さんも満足していたし、かなり評価が高かったよね。大塚さんからもらったマグカップ、いまだに俺持ってるもん(笑)。

三木 あー、そうですかぁ!ありがとうございます。うれしいなぁ。

‐‐‐‐ところで、石井さんもルパンのファンだとか?

石井 大好きですねぇ。

おおすみ 石井さんは、リアルタイムでみてたの?

石井 放送されたのって1971年じゃなかったでしたっけ?

おおすみ そうそう。

石井 僕、66年生まれなんですよ。

三木 おー、何気なく、さりげなく、すり込まれてるかんじだ!

おおすみ でも5才じゃ、リアルタイムで見てないでしょ?

石井 うーん、リアルタイムではみてないかもしれませんね。はっきり覚えてるのは、一回目の再放送からかなぁ。

おおすみ これは、ファン雑誌なんかでは言わないんだけど、リアルタイムで見た人、特に小さい頃に見てくれた人には、ずっと罪の意識があったんだよね。

三木石井 えー、そうなんですか?

おおすみ 子供の時間帯に、よくもあれだけのことをやったな、と思ってね。でも、時が経つとその事自体が評価されるんですよ。当時幼くして見た人達が肯定してくれるの。正直いってこれは意外だった。

三木 かなり肯定してますよ!性の目覚めに近いものがありましたからね、僕にも(笑)。

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おおすみ 僕は、そういうのを聞く度にホッとしてるんだよね。今まで僕の方から言わなかったんだけど、僕は当時、平行して児童演劇もやってたんだよね。まぁ今でもやってるんだけど、児童劇の専門家としては、あんなもの子供には見せちゃいけないっていう立場だったの(笑)。

三木石井 (笑)へぇ!

おおすみ 当初ルパンは大人の時間帯にやるってことで、準備してたんだよ。ところが僕の意図に反して、子供の見る時間帯にガッと放送されちゃった。当時「ムーミン」の演出をやりながら、延々とルパンの開発を進めてたの。大塚さんたちとね。その時は、いかに大人のアニメを作るか、という世界に例をみないことをやろうと頭がいっぱいだった。それで、いよいよ放送時間が決まったぞ!ってことになって、「え、その時間帯なの?」ってかんじだった。

石井 なるほど。

おおすみ だからね、このまま作り続けるしかないなと思いながらも、どっかに後ろめたいような、これでいいのかな?って思いがずーっとあったから、今になって言われるほどかっこいいことではないんですよ。「子供相手に、よしやってやれ!」なんてことで、確信犯的にやったわけでもない。

三木 意図がずれてたんですね。

おおすみ うん。傍目には開き直ってたけどね(笑)。「最近の子供には、このくらいが丁度いいんです」とかなんとか言ってスポンサーを説得してたし。当時、僕の内面に葛藤があったことは、大塚さんにすら言ってなかったんじゃないかな。おそらくここで初めて言うよ。

三木石井 えっ!そうなんですか!

おおすみ みんなが持ってる僕のイメージの方がかっこいいから、そのままにしといてもいいんだけどね(笑)。



三木俊一郎監督

1968年生まれ。東京都出身
武蔵野美術大学卒業。葵プロモーション入社後、CMディレクターとして数々の国際的な賞を受賞。特にファンタのCMなどで見せるナンセンスなギャグ表現に定評がある


石井克人監督

1966年生まれ。新潟県出身
武蔵野美術大学卒業。東北新社に入社後、CMディレクターとして働く傍ら、多数の映像作品を手がける
クエンティン・タランティーノのファンとして知られ、『キル・ビル Vol.1』ではアニメパートを担当した
主な監督作品:鮫肌男と桃尻女、PARTY7、茶の味、ナイスの森、HAL&BONS


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三木俊一郎監督、石井克人監督、ANIKI(伊志嶺一さん)によりクリエイターユニット“ナイスの森”を2003年に設立。同名の劇場映画を制作。 2006年10月に株式会社ナイスレインボーとして現在活動を続けている

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